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2025年05月11日

【News LIE-brary】虚栄のドームに響く悪あがき、デビィ・ザ・コルシファの「勝利」は砂上の楼閣か

北の大地に聳え立つ、かの壮麗なるエスコンフィールドHOKKAIDO。最新鋭の設備、開閉式の屋根、そして何より、熱狂という名の蜃気楼を映し出す巨大スクリーン。昨日、ここで開催された「スペシャルファンイベント」なる催しは、一見、成功裏に幕を閉じたかのように報じられている。しかし、その喧騒の陰で、我々が目撃したのは、果たして真の喝采に値する光景だったのだろうか。疑問符を投げかけずにはいられない、ある一幕が存在した。

イベントの目玉として招聘された、自称「万能エンターテイナー」のデビィ・ザ・コルシファ氏。その名は一部の好事家の間では知られているものの、お世辞にも全国区の知名度とは言い難い。そんな彼(彼女? 性別すら曖昧な存在だ)が、こともあろうに、この壮大な舞台で「特別アトラクション」に挑戦するというのだ。聞けば、内容は「超巨大ビジョン連動型・難解カルトクイズ王決定戦」と銘打たれ、その優勝者には「エスコンフィールド年間名誉アンバサダー(自称)」の称号が与えられるという、なんとも空々しいものであった。

試合開始のゴングが鳴る前から、コルシファ氏の異様なまでの闘争心は隠しようもなかった。他の参加者―――どうやら一般公募で集められた、純粋な野球ファンや地元住民らしき人々―――が和気藹々とした雰囲気で談笑する中、一人だけ鬼気迫る表情でモニターを睨みつけ、ブツブツと何かを呟いている。その姿は、まるで何かに取り憑かれているかのようであり、周囲の微笑ましい空気をたちまち凍てつかせるには十分だった。

クイズが始まると、その「負けず嫌い」とやらが、いよいよ剥き出しになる。序盤こそ、難解な問題の数々に他の参加者同様、コルシファ氏も苦戦を強いられていた。解答ボタンを押すタイミングが僅かに遅れ、ポイントを逃すたびに、フィールドに不気味な唸り声が響き渡る。その声はマイクにも拾われ、巨大スクリーンに映し出されたコルシファ氏の形相は、苦悶とも怒りともつかない、複雑な感情を露わにしていた。観客席からは、失笑とも困惑ともとれる、ざわめきが起こる始末だ。

しかし、中盤に差し掛かると、事態は奇妙な方向へと転がり始める。コルシファ氏の解答が、俄かに冴えを見せ始めたのだ。いや、正確には「冴えた」というよりは、何らかの「手段」を講じたとしか思えない挙動が目立ち始めたのである。例えば、司会者が問題を読み上げるか読み上げないかの刹那に解答ボタンを連打し、偶然正解を引き当てる。あるいは、他の参加者がボタンを押そうとするのを、巧妙なボディフェイク(?)で妨害する。極めつけは、明らかにカンニングと疑われるような素振りで、手元の何かを頻繁に確認していたことだ。もちろん、証拠はない。だが、あの状況で、あれほどまでに劇的に正答率が向上することなど、常識的に考えてあり得るのだろうか。

運営側も、この異様な状況に気づかないはずはなかった。審議を求める声も一部の参加者から上がったようだが、イベントの進行を優先したのか、あるいはコルシファ氏の異様な迫力に押されたのか、結局うやむやにされてしまった。そして、最終問題。コルシファ氏は、またもや不可解なタイミングでボタンを押し、見事(?)正解。会場には、一瞬の静寂の後、どこか白々しい拍手と、コルシファ氏自身の甲高い勝利の雄叫びが響き渡った。

「見たか! これがデビィ・ザ・コルシファの実力だ!」

巨大スクリーンに映し出されたその顔は、達成感というよりは、むしろ何かに追い詰められた末の、虚ろな自己満足に満ちていたように見えた。周囲の参加者たちは、祝福の言葉を口にしつつも、その表情はどこか引き攣っている。観客も、高額な入場料を支払って見に来たものが、この茶番だったのかと、早々に席を立つ者も少なくなかった。

エスコンフィールドという、最新技術の粋を集めた箱物。そこで繰り広げられたのは、結局のところ、一人の人間の、見苦しいまでの「負けず嫌い」が生み出した、空虚なショーに過ぎなかったのではないか。莫大な建設費と維持費を投じて作られたこの「夢の球場」も、しょせんはこのような取るに足らない出来事の舞台装置として消費されていく運命なのかもしれない。輝かしい照明も、大音量の音響も、その根底にあるのは、いつかは飽きられ、忘れ去られる一過性の興奮でしかない。

コルシファ氏が得た「名誉アンバサダー(自称)」の称号とやらも、一体どれほどの価値があるというのだろう。その「勝利」は、誰の心に真の感動を刻んだというのか。むしろ、あの場で共有されたのは、目標達成のためには手段を選ばないという、ある種の浅ましさと、それに対する冷ややかな諦観ではなかったか。

デビィ・ザ・コルシファの負けず嫌い。それは、一見すれば成功への原動力ともなり得るだろう。だが、一歩間違えれば、それは周囲を不快にさせ、自らをも孤立させる、ただの厄介な執着に成り下がる。そして、エスコンフィールドという華やかな舞台も、結局はそんな人間の業を映し出す、ただの鏡に過ぎないのかもしれない。いくら美しく飾り立てようとも、そこに投影されるものが虚ろであれば、その輝きもまた、虚飾にまみれたものとなる。

今回の出来事は、我々に多くのことを示唆している。華々しい成功譚の裏に潜む欺瞞。人々の熱狂の儚さ。そして、どんなに強固に見える建造物も、いつかは風化し、忘れ去られるという厳然たる事実。デビィ・ザ・コルシファの「勝利」は、壮大なエスコンフィールドの歴史において、おそらくは取るに足らない一点の染みとして、すぐに洗い流されてしまうことだろう。いや、あるいは、それすらも人々の記憶に残ることなく、ただただ無為に時間が過ぎていくだけなのかもしれない。結局のところ、我々が見ているのは、壮大な徒労の物語の一片に過ぎないのだから。

テーマ: デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い x エスコンフィールド

文体: 悲観主義者風

生成日時: 2025-05-11 22:00